「今」を乱すトラウマ記憶
参考「トラウマのことがわかる本」
トラウマ体験は瞬間冷凍される
強烈な体験は処理することが難しいので、その時の五感、感情、認知、思考は全てそのまま冷凍保存される。
この仕組みは、生物として、危険にいち早く気づきいて生き延びるための能力だが、に複雑な社会的で生きる人間には厄介になることが多い。
日常的な体験の記憶は、たとえ嫌な思い出があっても、その時の感情や感覚は消化され、加工される。
嫌な思いをしたから避けよう、などの判断材料になることはあっても、その時の感情、感覚がそのままよみがえるわけではない。
上記の本で、トラウマ記憶を強引に渡された「生肉」に例えて考えられている。
これはとてもわかりやすかった。
日常的に「つらい」と感じる体験が300グラムの肉を渡されることだと仮定、このくらいなら調理して食べれば栄養になる。
一方、トラウマ体験は、いきなり30キロの肉が持ち込まれたり、連日、3キロの肉が届けられるようなものなので、とても食べきれない。
痛んで腐らないように冷蔵庫を用意して保存しておくことになる。
しまったことを忘れていても冷凍庫自体は消えない。
ときに冷凍庫の扉が開き、肉の解凍が始まる。
一気に溶け出すので食べきれず、再凍結される。
こうして「過去に押し付けられたもの」がいつまでも残ってしまう。
再体験症状は「解離」の現れ
トラウマ記憶が冷凍保存され、ふだんの自分から遠ざけられる現象は、解離の一種。
解離は3段階に分けられる。
一次解離
頭の中に冷凍庫が一つある状態、主にPTSD
二次解離
冷凍庫がいくつも存在する状態、複雑性PTSD
三次解離
解離性同一障害と診断されることもある。
トラウマ記憶は分厚い「解離の壁」で隔てられ、普段の自分とは別の人格状態が保持される。
解凍が始まる「引き金(トリガー)」の色々
・あの時、あの人に似ている
・慣れない環境
・孤立感
ある体験がトラウマになったということは、その時「ひとりぼっちだ」「だれも わかってくれない」という思いがあったから。
日々の孤立感が、引き金になることもある。
・ポジティブな体験さえも引き金になることがある。
対人関係上の問題で傷を負っている場合、長く続く関係があることを信じられない。
親密な関係のなかで傷を負った場合、近しくなるにつれ恐怖が増し、解凍が起こりやすくなることがある。
*最後の 親密な関係で傷を負った場合、近しくなるにつれて恐怖が増し、解凍が起こりやすくなるというのは、自分にとても当てはまる。
一方的に否定された、裏切られた、認められなかった、突然何の前触れもなく切れられ、罵られたなどの記憶が解凍され、逃避、回避、攻撃などの行動が誘発されてしまう・・・
まだまだ冷凍庫がたくさんあるようだ。
自分でさえ、わけのわからない自分の感情と行動にはそれなりの理由があった。
子どもは、わけのわからない親の行動に適応し、その状況をなんとか生き抜く。
今は不必要で厄介な状況も、子どもの時は生き延びるために必要なことだったとわかったことは、大いに収穫である。