毒親(発達障害)と生きる

共感・肯定ゼロ 否定と操縦の子育てからの回復

マルトリートメントとオキシトシン(愛情ホルモン)

 

 オキシトシン

オキシトシンは妊娠、出産、授乳に関する女性特有のホルモンとして知られてきた。

最近になり、親子間の相互作用や絆形成の他、社会性の獲得、さらにストレスや不安を和らげる作用などもあることもわかってきた。

社会性を高め、親密さを感じ、寛容で優しい気持ちや対人関係を円滑にするなど、オキシトシンの働きは広範囲に及んでいる。

オキシトシンは女性の体内だけではなく、男性の脳内にも存在し、男女関係成立にも重要な役割を担っている。

オキシトシンが不足すると、他人とのかかわりに不安を覚え、友好的な対人関係を結びにくくなったり、それを維持しにくくなったりする。

 

このブログでは愛着と愛着障害についていくつかの記事を書いてきたが、

その愛着形成に重要な役割を果たしているのが、オキシトシンということになる。

 

マルトリートメントでオキシトシン受容体の遺伝子が変化

 マルトリートメント(不適切な養育)を受けた子どもとそうではない子どものオキシトシンを受容する細胞のDNAの違いを調べた実験で、

マルトリートメントを受けた子どもはそうでない子どもに比べ、1.4倍の確率で「メチル化」という現象が起きていることが分かった。

「メチル化」というのは、遺伝子のある部分にメチル基というスイッチのようなものがつくことで、オンの状態だったものがオフになる現象をさす。

これにより、愛着形成にかかわるオキシトシンがはたらきにくくなっていることが分かった。

 

また、マルトリートメントを受けた子どもは、そうでない子どもに比べて左脳の前頭眼窩皮質の一部、神経細胞が集まっている灰白質の容積が小さくなっていることが分かった。

前頭眼窩皮質はオキシトシンの受容体が多く存在する部位。

マルトリートメントを受けた経験がオキシトシン受容体のメチル化を誘導していると考えられ、この部位が小さい子どもほど、「愛着不安」(不安な気持ち、満たされない気持ち)の度合いが高い状態であるとわかった。

マルトリートメントによって生じた愛着障害の背景に、遺伝子上の後天的変化があることが示唆された。

「メチル化」は可逆性があり、スイッチを取り払ってオンの状態に戻すことができる。

 

*マルトリートメント

虐待とほぼ同義、強者である大人から弱者である子どもへの不適切な養育、対応

 

参考サイトおよび書籍

www.u-fukui.ac.jp

 

 

 子育ての迷信や思い込みからの脱却

今でも時おり、母がなにげなくいった言葉を思いだす。

「3歳までは覚えてないから叩いてもいい」

どうやら母は、3歳以前、私の尻を頻繁に叩いていたらしい。

しゅんしゅん湯気を立てるやかんに手を伸ばした、道路へのに飛び出したなど、一刻を争う危険な時に思わず手が出てしまったというのは、個人的には許せるかなとは思う。

けれども、小さな子どもであるから抱きしめて危険から遠ざけるだけで十分なのではないだろうか。

母の現在の言動と過去の記憶から推測すると、母はその時の気分で赤ん坊の私を叩いていたのではないかと思う。

母の子どもに対する言動には一貫性がない。

両親はー甘やかすとわがままに育つーと思い込んでいた。

子どもを肯定したり、共感することが、甘やかしだと考えていたとも思われる。

 怒鳴りつけや暴言は躾であり、子どものためだと考えていた。

以前の記事で親の暴言が子どもの脳を傷つけていることを書いた。

 

hohoemiko.hatenablog.com

 

 虐待という言葉では激しい身体的、性的虐待、ネグレクト、などが連想されるが、それらが伴わない暴言でも子どもの脳は傷つく。

体罰によって脳の「前頭前野」は萎縮し、性的マルトリートメントやDV目撃によって「視覚野」が萎縮「海馬」「小脳中部」などにも影響があり、それらはこころの不調をおもたらすということもわかってきた。

 

日本では体罰容認派はまだ6割を超えるという。

私自身も思わず子どもを叩いてしまったことはある。

反省も含めて、親から子へを受け継がれてしまった負の認識を変えていきたいと思う。

 科学的知見を知ることは、子育ての認識や人間関係、さらには介護にも役立つと思う。

 

参考書籍