愛着障害の広汎性と遅発性
愛着(アタッチメント)はヒトの土台
人の赤ん坊が生まれてから主な養育者と育む愛着(アタッチメント)はその後の人生の基礎となる。
人は脆弱な体で未完成な状態で生まれるのでアタッチメントは非常に重要な役割を果たす。
愛着が形成される過程で養育者と赤ん坊はほほえみあい、笑いあい、抱っこされ、スキンシップを多く含むやり取りを繰り返す。
お腹が空いたり、暑かったり、寒かったり、びっくりしたり、恐かったり、不快な状況に陥った時に、あやされ、なぐさめられ、お腹を満たされ、快の状況に戻れることを繰り返し、養育者に対する信頼が生まれ、ヒトとしての機能する基礎が育まれる。
こうして成長の土台が出来上がる。
木の根っこの部分が養育者との愛着・アタッチメントである。
愛着が不十分だった場合や、さらにマルトリートメント(虐待・暴言・過干渉)が行われた場合はどうだろうか
木の根の部分がマルトリートメントと愛着障害になっている。
木の幹が細く葉も実もなく元気のない木が描かれている。
その影響は、心身の状態、人間関係、社会的な言動など広範囲に影響を及ぼす。
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愛着障害は遅れてスイッチが入る
愛着障害は気づかれにい。
家の中の孤立した子育て環境になっていること、身体的虐待やネグレクトが目立たないマルトリートメントであれば、さらに気づかれにくい。
愛着障害の恐ろしさは、すぐに症状がでないことも多く、むしろ数年から十数年を経過するうちに、徐々に症状化して、困難が強まていきやすいということだ。
そのため、因果関係にも気づかれにくい。別の病気が原因とされたり、生まれもった特性のせいにされたりする。
幼いころに植えつけられた悲劇の種は、遺伝子と同じように、その人の人生を狂わせ続けるが、その影響と被害は、時間がたつにつれて強まってくるので、どこからそうなっかのかが見えにくいのだ。
ほんのわずかずつ、軌道からズレていくが、そのズレは、1年や2年ではさほど目立たない。しかし、5年、10年、20年という時間がたつうちに、途方もない違いとなって表れるのである。
出世魚現象
生まれつき「発達の凹凸」を持っている人はたくさんいる。それだけなら問題ではない。しかし、一旦、トラウマ的なものが加わると、発達障害の負の要素は親から子へ、子から孫へと伝染する。それどころか、増幅して行く場合がある。
杉山さんはそれを「出世魚現象」と呼んでいるが、その連鎖は断ち切らなければならない。
「発達障害と少年犯罪」 田淵俊彦 より
文中のトラウマとは愛着の傷、マルトリートメントをさす。
*文中の杉山さん
あいち小児保健医療センター診療科部長兼保健センター長
著書 「子ども虐待という第4の発達障害」
「発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療」他
愛着の修復、愛着障害からの回復は可能か
ヒトとしての基礎となる愛着はその後の人生のすべてに深く影響を与える。
愛着の不全、マルトリートメントの影響からの、修復や回復・克服は可能だろうか。
答えは可能である。
時期や状況、どこまでを回復したと判断するかによって、見解は異なると思われるが。
愛着の仕組みやその影響が理解され始めたのは、最近のことである。
ヒトはまだまだ進化の途上にいるのだろう。
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