複雑性PTSDと発達期のトラウマ
親子の関係をしばらく愛着障害という側面からかいてきたが、トラウマやPTSDという観点から見てみることにする。
参考
PTSD(Post Toraumatic Stress Disorder)
PTSDは、災害や事故、犯罪が頻発していることもあり、よく聞かれる言葉となった。
災害などが頻発するのは残念なことだが、心のケアという面が注目されるようになったのはよいことと思う。
非日常的な体験だけがトラウマになるのではなく、日常的に繰り返される不適切な言動、例えば、DV・いじめ・モラルハラスメントもトラウマになり、感情や言動の調節機能、認知機能に偏りが出ることがわかってきた。
PTSDの症状
災害や事件、性暴力など、非日常的な恐怖体験によるトラウマは、再体験や脅威感の症状が強まる。
・脅威感 神経の高ぶりが続く。体の状態をうまくコントロールできなくなる。
・再体験 トラウマ体験時の記憶が勝手によみがえる。記憶の調節障害
・回避 トラウマ体験を思い出すような状況を避け続ける。適切な行動がとれない状態
複雑性PTSD(Complex Post Traumatic Disorder)
家庭内暴力や虐待など、逃れることが困難な状況の中で繰り返されてきた出来事によって生じたトラウマは、より複雑な症状を示す。
上記のPTSDの3つの症状に加えて、以下の症状がある。
・感情の調節障害
感情をコントロールできなかったり、自分の気持ちがわからなくなったりする。
・ネガティブな自己概念 (認知の調節障害)
ものごとのとらえ方にゆがみが生じ、極端な自己否定感をもちやすい。
事故に対してだけでなく、他者、世界を見る目も変わる
・対人関係の障害
他者との関係を維持し、親しくなることが難しくなる。
複雑性PTSDはWHOの疾病分類(最新版 ICD-11)に初めて取り上げられた診断名。
アメリカ精神医学会による診断基準(DSM-5)には掲載されていない。
発達期のトラウマ
トラウマが注目されるようになったのはベトナム戦争の帰還兵と性暴力の被害者に共通した症状が見られたことがきっかけである。
1990年代にPTSDの診断がアメリカで確立し、その後、虐待を受けてきた子どもにも同様の症状と、種々の調節障害があらわれることがわかった。
トラウマ研究の世界的権威であるコーク博士とハーマン博士は相次いで診断機中を発表し、後、コーク博士は子ども時代に生じた複雑なトラウマの影響を「発達性トラウマ障害」と提唱した。
WHOの疾病分類に採用された複雑性PTSDはこの流れをくむもの。
複雑性PTSDは、子ども時代のトラウマの後遺症であることが多い。